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ファーウェイのスマホが勝つための5つの戦略



 現在、世界第3位のスマートフォンメーカー・中国ファーウェイ(華為技術・Huawei Technologies)でコンシューマー向け製品のマーケティング・セールスを統括するJim Xuプレジデントは、今年9月、上海にある同社の研究開発拠点で、日本のメディアのインタビューに応じ、スマートフォン事業をさらに強くするための5つの戦略を語った。

Huawei Consumer Business Group Marketing and Sales ServiceのJim Xuプレジデント

水平分業時代に、あえて自社での製造や開発に取り組む



 今まで追い抜いてきたメーカーとはケタ違いに販売台数の多いサムスン、Appleに追いつくため、どのような戦略を描いているのか。Xuプレジデントが真っ先に挙げたキーワードは「品質」だ。

 それまで基地局ベンダーだったファーウェイが携帯端末事業に本格参入した当初、端末の設計・製造はODMベンダーに委託していたが、十分な品質を確保できないと判断し、自社設計に切り替えた。生産については、現在、出荷端末の約10%を自社で行い、残りの約90%についても“丸投げ”ではなく、自社の工場で十分に検証された生産ラインとプロセスを、委託先の工場内にそのまま再構築する形態をとり、自社工場と同じ品質を保ちながら生産数量を確保できる体制を確立した。Xuプレジデントは、ドイツテレコムが第三者として品質を評価したテストでは、サムスン、Appleを抜き14か月連続で1位を獲得していると強調した。

 2つ目は、独自のチップセットの開発だ。スマートフォンメーカーの多くは、クアルコムの「Snapdragon」シリーズなど他社製チップを用いているが、傘下に半導体メーカーのハイシリコン(海思半導体・HiSilicon Technology)を抱えるファーウェイは、「Kirin」シリーズに代表される独自CPUを採用。最新チップの「Kirin 970」は、CPUとGPUに加え「NPU(Neural network Processing Unit)」と呼ばれるAI専用の高速処理回路を内蔵する。

 「Kirin 970」は次世代Mateシリーズに搭載予定。技術の中身は未公開のため詳細は不明だが、ハードウェアでAI処理を高速化するという方向性は、AppleがiPhone 8/8 Plus/Xに搭載する新チップ「A11 Bionic」と同じだ。両社とも、今後スマホは、AIが鍵を握るという見立てなのだろう。

最新チップの「Kirin 970」

使いやすさと高性能・高クオリティを追求



 3つ目はソフトウェア技術だ。とりわけ、OSの開発に関しては特に力を入れているという。Xuプレジデントは「Android OSには、長く使うほど動作が遅くなるという課題があり、使用を始めてから12か月経つと、一般的に20~30%の速度低下が発生します」と説明。Windows PCでは、長く使っていると動作が「重くなった」と感じられ、元の性能を取り戻すにはOSのクリーンインストールが必要とされるが、Androidスマートフォンでも同様の現象が発生しているという。

 こうした不満を解消するため、ファーウェイでは2016年12月に発売した「HUAWEI Mate 9」から、独自の最適化を行い、20%の性能低下が発生する時期を従来の12か月から18か月へと延長。今後発売する機種にも同様の技術を取り入れ、「2018年には、ファーウェイ製品がAndroidスマートフォンで最も使いやすいものになる」とXuプレジデントはアピールした。

 4つ目の戦略は、老舗カメラメーカー・Leicaをはじめとした、世界で認められている一流企業とのパートナーシップだ。スマホでは、「HUAWEI P9」からLeicaと共同開発したデュアルレンズカメラを搭載。タブレット端末ではHarman Kardon、PCではドルビーと組んでオーディオの質を高めている。協業に関しては「オープン」な姿勢だといい、今後も優れたパートナーを求めていく方針だ。

2017年6月に発売した「HUAWEI P10 Plus/P10」

 Xuプレジデントが最後に示した戦略が、エコシステムの構築だ。スマートデバイスは、スマホやタブレットに限らず、ウェアラブル端末やスマートスピーカーなど、多岐に渡る。さまざまなジャンルに参入し、自ら製品を発売するだけではなく、チップセットの提供など他社への技術供給を行い、家庭内のスマートデバイスをネットワークで結んでいくことで、コンシューマー向け事業のボリュームと幅を拡大していく考えだ。

SIMフリー市場での成功は、キャリア向け事業にも好影響



 5つの戦略は、個別に見れば至極当然の内容であり、特に奇抜なアイデアではない。しかし、これらを同時に、世界規模でスピーディに推進できるメーカーは多くないだろう。Xuプレジデントによると、Appleやサムスンをいつ抜くかという目標は、「あえて設定していない」。戦略を実直に実行し、消費者にファーウェイ製品の価値が認められれば、自ずと販売台数も伸びるという考え方だ。

 現在、SIMフリースマートフォンは、ビジネス向けの「Mate」、ファッション性とカメラ性能を追求した「P」、そして若者やミッドレンジに向けた「nova」「honor」の4シリーズを展開しているが、まだまだ販売台数は少ないため、日本では、シリーズを絞り込んで人気機種に注力することも検討しているという。ただ、消費者からの評価は良好で、SIMフリー市場での高いシェアは、日本国内で大きな割合を占めるキャリア向けの端末供給事業にも「好影響を与えている」とXuプレジデントは話した。

 2010年に初の自社ブランドのスマートフォンを発売して以来、破竹の勢いで台数を伸ばし、サムスン、Appleに次ぐ、第3位にポジションまで上り詰めたファーウェイ。もともと通信事業者向けのネットワーク設備やサーバーの開発・製造を本業としており、現在、大手携帯端末メーカーの中では唯一、基地局などのネットワーク設備と、一般消費者向けの端末の両方を手がけている。

 収益性の高いネットワーク事業で盤石の地位を築きながら、あえて端末事業にも進出したのは、LTE/4Gの登場にあたり、消費者に使ってもらう機器まで自ら手がけなければ、なかなか普及は進まないという考えがあったからだという。2020年の5Gネットワークの実用化まで3年を切った今、ファーウェイの5つの戦略が着実に推進されれば、モバイル市場における同社のポジションは一層強固なものになると考えられる。(BCN・日高 彰)



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