編集者/ライター 稲田豊史38歳ご使用の部屋の広さ:12畳
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BDソフト再生で最も向いているのは、動画枚数が多く描き込み密度の高いアニメやCGアニメ(ジブリ作品、ピクサー作品等)、ダイナミックでシャープな画調のハリウッド映画など。元の素材が高品位であればあるほどアプコンの実力を発揮する印象。『崖の上のポニョ』のアナログな筆のタッチ、『アバター』における惑星パンドラの種族ナヴィの存在感、『トランスフォーマー』シリーズの精密なロボット描画などは、目を見張る解像度。なかでも『トイストーリー3』は出色。もともとの作りこみが細かいこともあって、尋常でない解像感が味わえる。ダイナミックな色使いもモニタと相性がいい。4Kの精細感は凄まじいので、55インチの超近接視聴(1〜1.5m)が可能。リビングで映画館同様の「視界いっぱいに映像」状態にもっていける。これには感動した。
【描画特性】
基本的な輝度がとても高く、デフォルトでは結構飛ばし気味。色数の多いダイナミックな描画は得意。反面、色数が少ない絵の繊細な絵作り(古い映画など)はもう少し。力技でねじ伏せているイメージ。映画視聴に関しては「シーンセレクト」機能の「シネマ」がよくできている。単に暗めに設定するだけでなく、アプコンによって精細感が出過ぎる(粒子感が増大する)のを緩和する。
【モーションフロー】
非常に遊べる機能。特にアニメでカメラパンする時のチラツキが激烈に低減するので、絵の描き込みを鑑賞することに集中できる。ジブリ作品や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』のように、作画が贅沢なアニメやカメラが高速移動するアニメを見る際には試す価値あり。「こんな絵だったのか!」という発見がある。映画『トランスフォーマー』のように、精細なメカCGの動きが早すぎて挙動が補足できずイライラする人にも向いている。瓦礫の一粒一粒も丸見え。普通、映画作品でモーションフローを効かせすぎると「コマ感」が減退してビデオ画質のように安っぽいルックになってしまいがちだが、BDの4Kアプコンは1枚絵のクオリティが高い水準なので、安っぽくならずになめらかさの恩恵だけを獲得できている。非常にマニアックな楽しみ方ではあるが、所持BDをアブコン+モーションフローで見直せば、何度も観た映画も、シーン内に新しい物理的発見がある(何度も観たBD『プライベート・ライアン』の冒頭上陸シーンをモーションフローを最高に効かせて視聴したところ、あの手ブレカメラ演出では気づかなかった細かい小道具なども確認できた)。
【地上波、SDソース】
地デジ視聴は安定のクリア感、解像感。リビングの照明が明るくても負けない輝度。地デジアニメは、素材の描き込みがモニタの求めるクオリティに達していないものが大半のため、逆に粗が目立つ。DVD視聴時にはアプコンの恩恵をあまり感じられなかったが、BDソースに目が慣れすぎたせいかもしれない。
【全体論】
最高の素材を最小の設定で味わうならよし。ただし古い素材やクオリティの低い素材を微調整しながら観るにはある程度試行錯誤が必要。良くも悪くも、アプコンによって素材本来の姿を丸裸にしてしまう。ごまかしをひっぺがす無慈悲さ。素材を生徒に例えるなら、「劣等生に厳しく優等生にやさしい」エリート主義な作り。